作品の世界観とその世界の空気をつくること
テーマパークの中の装飾品の一つ一つに歴史を感じるような古びた中世の街並
- 近未来の宇宙船
- 荒廃した都市
- 映画の中に存在する非現実的な世界…
これらを現実の世界に創り出すのが「美術塗装」です。
映画のセットやテーマパークのほか、店舗などの意外と身近な場所にも、この技術は活かされています。
特殊な分野ではありますが、実は作業自体は前回のコラムでもご紹介した通り、プラモデルの塗装に共通するものが多くあります。
美術塗装で使用する「エイジング」「ウェザリング」などの言葉は、きっと模型好きな皆さんにも耳なじみのあるものなのではないでしょうか。
「キレイ」の、その先。
美術塗装は「キレイ」のその先にあるものです。「キレイ」だったものに、エイジング・ウェザリングをかけてあえて「汚す」。
「汚すだけだから楽でしょ!」と思われるかもしれませんが、例えば壁のキズひとつとっても、そこにはストーリーがあります。
それを理解し具体的なイメージをして汚さなければ良いものはできあがりません。そしてそのイメージと熟練したテクニックが相まって、よりリアルな表現となっていくのです。
”名脇役”でありたい。
僕はこの仕事をするうえで「空気感」を常に心がけています。
主張しすぎると画面の中でうるさくなってしまうし、自分のやった仕事はあくまで”名脇役”であってほしいです。その場面の空気になりたい。
あくまで物語の一部であることが重要です。 その存在をハッキリと感じるわけではない。 でもその空間・場面を生々しく伝える。
そんな画面の空気をつくっていくことが、僕たちのテーマです。